想い

愛知県瀬戸市は、千年以上の歴史と伝統を有するやきものの産地です。


瀬戸において約千年前に始まったやきものづくりは、鎌倉時代に中国に渡ってやきものの技法を学んだといわれる陶祖 加藤四郎左衛門景正によって陶器がつくられ、その後江戸時代後期に先進の磁器生産技術を肥前で学んだ磁祖 加藤民吉の帰郷により伝えられた磁器製法によって、染付磁器が急速に進歩し発展していきました。瀬戸は陶器と磁器という二種類のやきものを長年にわたって作り続けている稀有な産地です。


瀬戸には陶土採掘場があり、自然の恵みである良質な粘土が産出されます。同じく自然の恵みである木や水なども利用し、白く焼きあがる耐火度の高い粘土を活かした様々な施釉製品が生み出されました。一方で、自然描写を中心とした精緻な染付画が特徴の瀬戸染付焼が海外の万国博覧会で高い評価を得るなど、陶工の高い技術力も注目されました。

ここで共通するのは自然との関わり方です。日本をはじめとする東洋文化では、神と自然と人間は三位一体となってつながり、自然と人間が共生しようとする思想を持っています。農耕民族である日本人は、自然の恩恵を受け、自然の循環の中で生きていく知恵として鋭い感受性を持ち、さらには自然を神とする高い精神性によって、自然が織りなす美しい景色を芸術表現へと高めていったのです。


日本人の心、世界を魅了した職人の技術と美、代々受け継がれてきた想い、やきもののまちの風景など、これらに思いを寄せて、ディスプレイによって伝統工芸の魅力を表現していきたいと思います。

        

VMDインストラクター
設えスタイル提案
霞 芳